医療機関や福祉施設ではサロンのように十分な設備が揃っていないので、ケアしにくい。。。そう感じてることありませんか。実は、フットケアの質や安全性を左右するものに「体勢」が関係しています。この記事では、どうして体勢を整えることが大切なのか、どのように整えると良いのかを紹介しています。ぜひ、最後までお読み頂きポジショニングの確認に活かして頂けたら嬉しいです。
お互いに自然な体勢でフットケアを行う
医療機関や福祉施設では、サロンと違ってフットケアに適したベッドや椅子がない環境で爪切りや胼胝、角質のお手入れをするケースが多いです。
限られたスペース、選べない環境下だからといってポジショニングをきちんと行わないと、施術者だけでなくケアを受けている方にも負担がかかります。
そのため、ポジショニングは基本であり重要なです。
フットケアを受ける対象者:患者さん等
ケアを受ける方は、一定時間足の自由を奪われます。安全確保のためにご協力いただかなくてはなりません。
そのため、少しでも安心してリラックスしていただけるように工夫が必要です。以下に大切な7項目をピックアップしました。
✅予め、要するケア時間や料金の見通しを伝えて同意は得ていますか?
どんなことでもそうですが、人は見通しがつかないと不安になりやすいです。そのため、必要以上の緊張状態になってしまいリラックスどころではありません。
✅身体が曲がってませんか?
体が曲がっていたら安定しませんし落ち着きませんね。体も痛くなってしまいます。
✅腰や膝が軽度曲がっていますか?
腰や膝を伸ばした状態で静止状態を維持するのは、思っている以上に苦痛!軽く曲げるだけで随分と楽になります。
✅膝の下や下腿の下にタオル等入れて安定していますか?
膝を曲げた状態をご本人に維持してもらうのはずっと緊張していないとならないのでストレスです。さらに膝が内側外側に倒れてしまいかねませんので、ケアにおいても危険です。したがって、たとえ眠ってしまっても大丈夫なようにタオル頭を膝下に挿入して安定した状態をつくります。踵もベットから浮くと一層楽になります。踵のケアを行うときは浮くようなセットがお勧めです。
✅左右の足が開いていますか?
左右の足がピッタリくっついているのは、足に力が入っている状態です。開きすぎても疲れます。そのため、自然な状態で少し開いているといいですね。ピッタリくっついているとケアがしにくく、もし足が蹴り出されたとき顔に直面します。少し開いていることで、人の体は内旋方向に動かすのは難しいためケアしていない足が動いてもダイレクトにはぶつかりにくくなります。
✅頭背部の支えが安定していますか?
足を差し出して体勢を維持します。そのため、背もたれがないと体制に無理が生じやすいです。特にご高齢者はベットに横になってもらう、背もたれのある椅子に腰掛けていただけるようなど体を預けられるよう準備します。円背や腰痛がある方は、無理を強いることがないよう特に注意が必要です。
*療養支援・教育を兼ねて実施するとき、ケアを受ける方が自身のケアの様子を見たり、自分の足に触れられるような体勢がいいですね。
✅プライバシーは保護されていますか?
足を人に見せるのは恥ずかしいものです。抵抗感や羞恥心への配慮をきちんとしましょう。最低限、他の人の目を気にしないで過ごせる環境を整えることが望ましいです。
フットケアを実施する方
忙しい時間の隙間時間でケアをしようとすると、少しくらい体勢が悪くてもやってしまいたくなるのではないでしょうか。
少なくても、ちーさんはありますw。
そんな誘惑を断ち切り、自分にとっても以下の5つの項目に注意して体勢を整え安全にケアを提供しましょう。
✅ケアする箇所は低すぎませんか?
ケアする箇所が胸〜低くても臍辺りの高さが目安です。それよりも低いと腰や背中を大きくかがめてケアを行うことになります。身体を痛めてしまいかねませんので要注意です。
✅自身の正面に足がありますか?自身の体はよじれていませんか?
正面にケアする足がないと、施術者の身体が不安定になります。要は体幹が定まりませんから両手を安定させようとしても無理で、ケアの質にも影響します。時に対象者の不安要素にもなります。
✅手を伸ばさずに届く位置に足がありますか?
前項と同様で、胸の前でケアするくらいでないと、足状態確認の十分に行えませんしケアがきちんと提供できませんね。手を伸ばすと脇が大きく開きますので手の安定感に欠けます。
✅必要物品は全て安全かつ手の届く場所に準備されていますか?
必要品が揃っていなかったり使いやすい場所にないと効率が悪く、無駄な時間を要します。結果、フットケアを受ける対象者の身体的負担が増すうえに不安を仰ぎます。
✅対象者の顔の表情が確認できますか?
対象者の表情を確認できることで、言葉に表現されない感覚や思いを推測することができます。また、ケア中は療養のことや様々な会話を広げることが可能です。ケアをしながら、どんな表情で話しているか覗いたり視線を合わせたりできるとよりいいですね。
無理のある体制は苦痛でしかなく、危険が高まる
不安定な体制で、手元を安定させようとしても無理な話。
ケアの間一定時間無理をしたりさせたりすると苦痛を伴う上、安定しません。安定しないフットケアは対象者も落ち着かないので動きやすいです。身体がどんな状態に置かれているかは、そのまま感情にも影響するのです。
ベースとなる体幹が不安定だと余計な力が入り割れてしまったり、爪切りの刃など道具が本来とは違う当たり方をしてしまう危険性もあります。傷を作ったり痛くなったり、想定外の出来事が起きかねません。
ケア提供者の身体を痛めてしまします。
また、対象者の足がケア中に動くことも想定しておくことも大切です。安定した状態であれば速やかに落ち着いて対応ができますので対象者も自身も怪我から守れます。
できるだけベットの高さ、位置を調整したり、足の高さを調整したり、自身の位置を低くしたりできるだけ安定して行えるよう調整しましょう。
例
病棟でのフットケア。
対象の患者さんは、意識レベルはJCSⅢー100(〜200)、自分で動くことがなく痛みに対しても反応がない体が大きめの男性でした。スタッフは忙しそうにバタバタしていて誰も声をかけられません。
ケアをする前に患者さんの身体を自分の方に近寄せたかったのですが、協力者がなかなか見つりませんでした。やっとの思いで捻出した時間だったこともあって、一人でできる範囲で体勢を整えてフットケアをすることにしました。やや手を伸ばす状態で腰も少し捻って。
わずか10分程度で終了・・・。
このたった10分によって、その後腰が痛くてテレビCMのように手を腰に当てて前屈したような姿勢から動けなくなってしまいました。3日ほど腰痛が続きましたが回復したのが幸いです。
ちーさんの良い教訓となっています。皆さんは気をつけて!
結論
フットケアを受ける方・施術者双方にとって安定した体勢が、安心感を高め質の高いケアを提供することにもつながります。
先の例では幸いにも患者さんにとっての不利益はありませんでしたが、危険です。
よって、ポジショニング調整はこだわるべし!一人で無理をしても、誰にも良いことはありません。
まとめ
フットケアをどんな場所で行うかによって、最善の環境は異なるかもしれません。ただ、どんな場所であっても対象者の体と気持ちへの配慮は不可欠です。
そして、ケアを実施するご自分の身体。体は取り替えることができませんし、自分の体は大切な財産であり資源です。
対象の方もOK・自分もOKな状態でケアを実施することで、そこに良い空気が流れることでしょう。
今日という日がいい1日でありますように!
コメント